「 LIQUID ART 」

LiquidArtはただ単に美しいだけでなく、流体力学的・数学的美しさを併せ持つ稀有なアートである。

材料:ミクストメディア  /  製作期間:約3週間

私は理系大学院修了後、5年間の化学メーカー勤務を経て絵描き屋になった。

アートをするにあたりこんなことが頭をよぎった。今までのバックグラウンドを生かしたアートは出来ないか、と。

科学的知見、研究的アプローチで何かアート出来ないかと考えた時、まず研究で一番大切にしていた事を思い出すことにした。

一番大切なこと、それはセレンディピティであり、偶発性であった。

研究では自分自身が考え付いたことをその通りに具現化することは一種の当たり前であり、それ以上のことは起こらないのである。よっぽどのことがない限り。

では、よっぽどののこととは何だろうか。

ノーベル賞を受賞するような研究者に多く共通する点がある。それはセレンディピティと言われる、予期せぬ偶発的要因により起こった成功である。

例えば、本来入れるはずのない量を間違えて添加してしまったことによる発見や、実験を忘れて長時間放置してしまったことによる発見など。

このように偶発性は思考の枠を超えさせてくれるため、研究では最も大切だと考えていた。

その研究でも重要であった偶発性を絵の具(粒子)の拡散・分散現象を用いて表現することにした結果LiquidArtが生まれた。

絵の具のような流体の拡散現象はフィックの法則・移流拡散方程式等の式を用いて表すことが出来る一方で、

カオス理論からもわかるように初期値鋭敏性ゆえに予測が事実上不可能である。

言い換えれば、どれだけ精度よく同じ条件でLiquid Artを制作しようとしても時間経過とともに誤差が大きくなっていくため結果的に1度として同じ絵は出来ないのである。

また、身近な自然科学で同じ現象を探すと天気予報が近い。

雲の動きも絵の具の拡散同様、いくらスーパーコンピュータを用いてシュミレーションを行ったとしてもその日のその瞬間になってみないとわからず、

3日後や7日後は時間経過とともに誤差は大きくなっていく為正確な予測は出来ない。

さらに言えば、2度と同じ形の雲は出来ないのである。これらはまさに偶発性の成すところである。